苦役列車とゲオアプリ
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登録すると、レンタル料金が新作でも半額になるクーポンが使えるというので、ゲオ公式アプリを入れてみた。
苦役列車
レンタルしたのは、「苦役列車」。新作料金400円のところ、初回登録特典のクーポン提示で、200円になった。
で、「苦役列車」だが、日雇い人足の中卒で天涯孤独の青年の鬱々とした日常が淡々と描かれている。
特に驚くべきエピソードはない。主人公のような境遇であれば、普通に起こり得ることだ。
中卒であるという劣等感を通して見れば、世の中は右を向いても左を見ても「お高くとまって」見えるだろうし、稼いだ日当の多くを酒や風俗に使えば家賃の支払いも滞る。
家賃を滞納すれば遅かれ早かれ追い出しを食らう。(引きこもりは主人公から見れば、お坊っちゃんの道楽にしか見えないだろう)
昔の女をコケにすることで味わう優越感など安酒の悪酔いに過ぎない。
物語は実にシンプルに進行する。原因と結果の法則が見事に展開されている。
劣等感や僻み根性で作ったバリケードの隙間から世間を眺め、悪態をつくような人間にいいことなどそうそうあるもんじゃない。
バカな生き方だと言えば、確かにその通りだが、個人的にはそんなに嫌いではない。うまく立ち回ろうとしない、できない主人公にはどこか懐かしさを感じる。「ああ、こんなやつ、いたなぁ…」と思う。
みんなどこに行ってしまったのだろうか…
まあ、だからと言って仮に主人公のようなやつと友人だとしても貸すカネはないが。
…と、まあそんなロクデナシの「出口なし」の物語なわけだから、観ている方は苦笑いしつつもテンションは下がってくる一方だ。
内心バカにしている日雇いの仕事に通い、嫌々働いているようなシーンなど見せられるとげんなりしてくる。
だが、われわれは、物語の最後に主人公の裸の背中を見たとき、その背中の筋肉の動きを見たとき、ホッとする。
やれやれ、とうとうやつも出口を見つけたのだと。
だが、そこでふと思う。
自分が見たのは、やつの背中だ。出口を見つけたやつの背中だ…
そう。われわれは出口を見つけた主人公をただ、見送ることしかできない自分に直面する。何事も他人事として眺めてきた自分に不意に出くわす。
そして、自分もまた苦役列車の乗客だったのだと気づくのだ。
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