Kids return , The way of growth.
俺たちもう終わっちゃったのかな…
古い写真が色褪せていくように、過去の記憶や印象も少しずつその輪郭が曖昧になり、滲んでいく。
ふと思いついて、十数年ぶりに北野武監督作品『キッズ・リターン』を観た。iPhoneで。
初めて観たとき、「これは凄い!」と思い、周りの人たちにも勧めたことを思い出した。
ただ、今思い起こしても自分がこの映画の何に心動かされたのかが判然としない。
「十数年ぶりに観てみたら、がっかりしました」というわけではない。
1時間47分、初めて観る映画のように飽きることもなくiPhoneのディスプレイを凝視し続けた。
だが、当時とは違う印象だった。
主人公の二人に感情移入することは難しかった。どちらかと言えば、森本レオ扮する彼らの担任教師の心情に近い目線で物語を観ていたと思う。
要するに、それだけ年を取ったということなのだろう。
やれやれ、年は取りたくないねぇ…というようなことが言いたいわけではない。
前に観たときは、「背伸びしたい二人の少年が大人の世界に入り、その無情さにつぶされかけたが、まだまだこれからさ。少年の心を持ち続けるんだというメッセージで終わる映画」というような感じで観た記憶が朧気に残っている。
しかし今回の印象は少し違って、主人公たちを取り巻く「大人たち」の世界の「幼稚さ」が気になって仕方なかった。
だから、おれの中でこの映画に関するデータを上書きしなくてはならない。
こんな感じだ。
背伸びしたい二人の少年が大人の世界で見たものは、未熟で幼稚でそれゆえに無慈悲な世界だった。大人はどこにもいなかった。子供の延長のような世界で、大人になることが、始まるわけがなかった。だからこそ、マサルはシンジにこう言うのだ。