ROAD TO NIRVANA

愛とポエムとお花のブログ。ときどき書評。たまに映画レビューとか。

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減らす技術 新装版

減らす技術 新装版

『減らす技術』を読んだ。断捨離系の本なのかと思っていたが、それとは少し毛色が変わっていた。まあでも考え方としては重なる部分は多いのだろう。

要するに、自分の人生にとって「本質に迫ること」ではない物事を減らし、本質的な生を生きようではないかという内容だ。

まったくの、ぐうの音も出ないくらいの正論であるが、やはりこの邦題は多少の誤解を招くのではないかという気もする。

なぜならそこには「技術」というほどのものは特に見当たらないからだ。もしかすると、書いてあるのかもしれないが、おれには「技術」というほどには思えなかった。

これはおれが「技術」というものに何かしらの幻想を抱いているからなのかもしれない。

だからと言ってこの本が駄作であるというのではない。ほとんど何の反論も思いつかないくらいの正論が「優しく」語られている。「易しく」ではなく、「優しく」だ。おそらく著者は優しい人なのだろう。

性急で短絡的なおれなら、「無駄なことするな」で終わらせるところだが、著者のレオ・バボータ氏はいくつかの概念を提示して論理的に説明してくれる。

そうすることで情報の洪水に溺れかかっている人々が自らの現状を見直すように誘導する。それはさながら問い詰めないない禅僧のようだ。

この本が提唱する「技術」を実践する読者はゆっくりと確実に自らがまとった本質的ではない物事を剥ぎ取られていくだろう。

そして、自分の進んできた道を振り返り、「そういう力」は確かに存在するのだと確信するだろう。

この本を読んでいる間、おれがずっと思い出していたのは「北回帰線」か「南回帰線」だかは忘れたが、ヘンリー・ミラーの次のような言葉だった。

やりたいことは何でもやれ!

ただしそれは歓喜をともなうものに限るぞ!

北回帰線 (新潮文庫)

北回帰線 (新潮文庫)

南回帰線 (講談社文芸文庫)

南回帰線 (講談社文芸文庫)