ROAD TO NIRVANA

愛とポエムとお花のブログ。ときどき書評。たまに映画レビューとか。

#8875 has come back.

先月の末に、ソールの貼り替えに出したレッドウィングが戻ってきた。最近では、ソールの貼り替えと言わず、resole と言うらしい…と書くと、外来語と聞くと何でも皮肉めいたことを言う変わり者の独居老人のようだが、まったくの誤解である。むしろ英語の合理性に感心しているところだ。なにしろ、「再び」を意味する接頭語 re- をつけて、一語で「それ」を表すことができるのだ。今後はソールの貼り替えのことは、リソールと言いたい。これで非合理的なおれの思考も少しは合理的なものに近付けるだろう。【接頭辞】 re- の意味 - Gogengo! - ゴゲンゴ! - 英単語は語源で楽しく!

今回のソールは、Vibram #1136 のハニー(飴色)にしてみた。前回は1136の黒。Vibramでも#1136は割と手頃な値段のようだ。レッドウイングのソール貼り替え - ROAD TO NIRVANA

これまでのソールの消耗の具合を見ると、おれの姿勢はどうやら右傾化していることがわかる。リソールの目安としては、ミッドソールに摩滅が達する前に行うことだ。人それぞれだが。1回目のリソールは、レッドウィングを買って僅か3ヶ月でやった。2回目の今回は、真夏の帰省時以外ほぼ毎日履いて約1年半。巷でよく聞く、1日履いたら1日休ませるというようなことはあまり考えない。ちなみに夏は大体KEENのサンダルで過ごす。これも夏の間は毎日履く。そして毎年足の甲の皮が剥ける。痛い。実家の父がKEENの値段を聞いて目を剥いたことを思い出す。しかし硬質のゴムかウレタンか何か知らないが、KEENの材質だと普通に履くのなら、10年は保つと思うので、かえって安いのではないかと説明したが、完全スルーされたことも思い出す。

[キーン] KEEN MEN YOGUI ARTS 1002036 GRAPHITE (GRAPHITE/10)

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戻ってきた8875は、またヘビーローテションの日々を送ることになりそうだが、その前にいつもよりは念入りに磨くことにした。念入りと言っても普通の手入れ程度だが。

ブラシで全体の埃を取る。ウエスにつけたクリーナーで汚れを落とす。ミンクオイルを塗りこんで、乾拭き。

なぜか地蔵和讃のサビ(なのかは知らないが)が、頭に浮かぶ。それを声に出さず呟きながら磨く。一重積んでは父のため、二重積んでは母のため。

今までまともに磨いたこともないが、それでも靴磨きにハマる人が少なからずいるのは何となくわかる気がする。単調だが、奥深い。それとも単調だから奥深いのか。

レッドウィングを磨きながら、はるか昔に観た、根津甚八主演の『さらば愛しき大地』という破滅的な映画のワン・シーンを思い出す。薬物に取り憑かれたダンプ運転手の根津甚八が延々とダンプを洗い続けるシーンだ。

単調な作業を続けていると、思考能力が低下するのはある程度本当のことだろうが、だからと言って軽んじるべきではない。単純作業を舐めている人たちは、「思考のその先」があることを知らないだけだ。

さらば愛しき大地(廉価版) [DVD]

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とは言うものの、今回の靴磨きでは、「思考のその先」には到底及ばなかったが、その可能性は充分にあることはうかがえた。ブラック企業にお勤めで連日ストレスに晒され続けているような人には是非靴磨きを勧めたい。あるいは、何の努力もせずに自分の欲望のことだけを考えて、それを夢とか希望とか言い換えてばかりの人にもいいかもしれない。

この8875を買ったときに靴屋さんに通してもらったきり、一度も外したことのないシューレースを初めて抜いた。シューレースはネットに入れて洗濯機で洗った。

シューレースの跡が黒く残る。なかなか落ちない。おれはまだまだ靴磨きの修行が足りない。

ひと通り磨き終えて、最後にダイソー謹製カップインソールを交換する。今まで敷いていたのもダイソーのカップインソールだ。この2年でボロボロに擦り切れていた。純正のカップインソールもあるようだが、今のところ特に不満はない。レッドウィング愛好者の中には、カップインソールなど邪道だと考える向きもあるらしいが、「そうですか」と答える以外何もない。そのうち気が向いたらおれもカップインソールなしで履くかもしれない。そして、カップインソールなど邪道だと言うようになるのかもしれないが、未来のことは誰もわからない。

靴磨きは、われわれは未来ではなく今現在に生きているのだと教えてくれることのひとつだ。人生というエイジング - ROAD TO NIRVANA