ROAD TO NIRVANA

愛とポエムとお花のブログ。ときどき書評。たまに映画レビューとか。

カネを貯めるより血を溜めろ/『血流がすべて解決する』レビュー

血流がすべて解決する

血流がすべて解決する

実に興味深い本である。

人生のあらゆる問題は、まず血流を増やすことで好転していくのだという。

本の帯にはこうある。

血液サラサラ」ではなく、「血流たっぷり」をめざしなさい。

そして、血流たっぷりになることで、血圧・腰痛・ひざ痛・肩こり・頸痛・疲労感・ストレス・不眠・イライラ・生理痛・不妊症・更年期障害・冷え症・ダイエット・抜け毛・薄毛・美容といった問題が解決するのだという。

さらに、そうした数々の症状が治癒、緩和、好転することで、心も整っていくのだという。

そう。

あなたのやる気のなさや怠さ、人生全般における慢性的不調は「血流」が原因だったのだ。

あなたの夢が実現しないのは、ついてないとかタイミングが悪いとか知識やカネが足りないとかではなく、血が足りないからだったのだ。

おれはこれまで、その語感からのみの印象で「血液サラサラ」こそ大事なことだと思い込んでいたが、それだけでは足りなかった。

もちろん「血液サラサラ」は大事なことだが、肝心の血が少なくては意味がないのだと著者は長年の漢方治療の経験を通して語る。

だから、血流たっぷりな体をつくりましょうと提言する。

常々、サラサラと生きていきたいと思っていたおれは、「確かに!」と思うと同時に、「サラサラだけではダメだったのだ!迂闊だった!早合点だった!人間失格だった!生まれてすみません」とひとしきり自己批判した後、すぐに立ち直り、「これからは、血流たっぷりに生きよう」と前向きに思うのであった。

そのためには、やはり血をつくり、増やすことだ。

そしてそれは可能であると著者は言う。

本書には、そのための「食べ方」や「眠り方」の詳細が紹介されている。

例えば、「一週間夕食断食」

まあ読んで字のごとく、一週間ほど夕食を食べないことだが、これが胃腸の回復には効果的なのだという。

断食によって「空腹状態」をつくることは心身両面において、かなり有効であることは分かる。しかし夕食を抜くとは思いつかなかった。

おれは朝食は滅多に食べないが、夕食を抜くことはない。迂闊だった。生まれてすみません。

と、いつまでも落ち込んでいるヒマはない。

おれも一週間夕食断食をしようと思った途端、キッチンから何やらフライパンで炒める音がする。

「今晩のメニューは何?」

「ハンバーグ」

「……。」

とりあえず一週間夕食断食は延期することにしたが、胃腸が元気になれば、血もどんどんつくれるようになるということだけは忘れないようにしたい。

「眠り方」の章でも、興味深いことが書かれている。

例えば、夢を見るのは、血が足りないからだという。

夢占いも精神分析も青ざめる指摘である。

「魂は夜、肝(漢方で肝とは血をたくさん蓄えこんでいるところという意味/ p.141)に隠れる」という漢方の言葉があり、人は眠っているときに精神の疲れを血によって癒すという意味らしい。

血が足りなくなると、魂は隠れることができなくなって、ふらふらとさまよい出てしまう。その結果夢を見ると考えられています。/ p.141

「昨日見たあの夢の意味は…」とか「その夢はあなたのコンプレックスの象徴なのです」とかあれこれ考える以前に、血が足りないのだという指摘には、言葉を失うしかない。

そうだったのか、あの意味深なメッセージもあの夢のお告げもおれの血が足りなかったからなのかと茫然とする。

茫然としながらも、完全に覚醒した人は夢を見ないのだというのを聞いたことを思い出し、これはおそらく本当なのだろうと思う。

ということは、覚者は血が充分足りているのだろうということが導き出される。

常々、おれはまだまだ大人としての修行が足りないとは思っていたが、血も足りないとは無念である。人間失格であった。だからと言って、いつまでも人間失格などという後ろ向きの自己陶酔に浸っている場合ではない。浸るべきは自分の血なのだ。

一読をお勧めしたい。

そして、魂を自らの血に浸すのだ。

われわれの身体を駆け巡る血こそ、現実の中の現実なのだから。

本書は、レビュープラスさんより献本いただきました。

著者について 堀江昭佳(ほりえ・あきよし) 漢方薬剤師/不妊カウンセラー/有限会社堀江薬局代表/一般社団法人日本漢方薬膳協会代表理事 1974年生まれ、出雲市出身。出雲大社参道で90年続く老舗漢方薬局の4代目。 薬学部を卒業後、薬剤師となったのち対症療法中心の西洋医学とは違う、東洋医学・漢方の根本療法に魅力を感じ、方向転換する。本場中国の漢方医から学ぶ中、不妊に悩む友人の相談を受けたところ、漢方で妊娠したことに感動し、婦人科系の分野、なかでも不妊症を専門とするようになる。 体の不調の解消だけではなく、本人の抱えている常識や執着といった束縛からの「心の解放」を終着点としている唯一の漢方薬剤師。 血流を中心にすえた西洋医学、漢方医学、心理学の3つの視点からの総合的なアプローチは評判を呼び、自身の薬局で扱ってきた不妊、うつ、ダイエット、自律神経失調症など心と体の悩みは5万件を超える。地元島根はもとより全国、海外からも相談があり1か月先まで予約がいっぱいの状態が続いている。 不妊相談では9割が病院での不妊治療がうまくいかず、来局されるケースであるものの、寄せられる妊娠報告は2015年だけでも155名、2009年以降の累計は614名に上る。 また、日本漢方薬膳協会の代表理事にも就任し、広く漢方薬膳の知識を広め、より多くの女性に幸せと笑顔を届けるために奮闘中。/Amazon 商品説明より引用