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ROAD TO NIRVANA

愛とポエムとお花のブログ。ときどき書評。たまに映画レビューとか。

絶望の存在証明 / ブレット・イーストン・エリス『帝国のベッドルーム』を読んで

どうやら『レス・ザン・ゼロ』を読んで、もう四半世紀くらい過ぎたらしいが、俄かには信じ難い。

信じ難いが、それだけの時は流れたようだ。

あらためて振り返ってみると、邦訳されたエリスの作品はすべて読んでいることを思い出す。

そしてそれらのどの物語も同じ視線から語られている。

底なしの虚無からの視線。

この視線は瞑想の過程で人が陥る魔境のようなものなのかもしれない。

『帝国のベッドルーム』は、『レス・ザン・ゼロ』の続篇ということになっているが、ここでまた『…ゼロ』を引っ張り出して、いちいち読み返すことはしなかった。

どうせ同じようなものだし、どうせ引き込まれるに決まっている。

無意味な会話。

残忍な描写。

悪夢なのかそれとも現実なのか判然としない数々のエピソード。

ストーリーは、川の水が枯れたようにどこかへ消えて行く。

おれはそんな干からびてひび割れた川の跡をふらふらと歩くようにページをめくる。

おれはその川の途中で、小説を読むことを諦める。これは詩集なのだと思うようにする。

あるいは、バロウズを読むようにして、読むことにする。

やがて、語り手が「溺死寸前」であることが了解される。

彼は、水のない川で今にも溺れかかっている。

古い諺を証明するかのように、藁のようなイメージや「通常」なら誰も気にも留めない言葉にすがりついている。

この本は、豊穣の果てに虚無を見た者の悲しいまでの存在証明の書だ。