ROAD TO NIRVANA

愛とポエムとお花のブログ。ときどき書評。たまに映画レビューとか。

Where The Boys Go

先日、まったく勉強しない中2の息子の学力を知るために、模試を半ば強制的に受けさせてきた。

特に名は秘すが、真理のことだけを考えろという意味の名前をつけてしまったから、勉強なとどいう俗なことには興味がなくなったのかもしれないと考えると少しだけ複雑な気分ではある。

と、ため息をおれがついても息子の成績が上がるわけでもない。

まあ成績が上がるも下がるも本人次第だが、もうちょっとやる気を出してもいいのではないかと思い、本人の自覚を促すためにも今回の模試受検ということになった。

本人の自覚と言いながら、それを強制的にやらせるというのも矛盾しているが、それが親心というものだ。よく知らないが。

そんなわけで、当日の朝、息子を横浜駅近くの会場まで送り届けた。

それで一応の任務完了だが、試験が終わったら迎えに来てやろうと思い、それまで横浜駅近辺をぶらつくことにした。

鳩と会話したあと、西口のドンキホーテで激安の掘り出し物でもないかとしばらくウロウロしたが、特に欲しいものも見当たらず店を出て、久しぶりに吉野家の牛丼(並)を食べた。

時計を見ると、息子の模試が終わるまであと4時間もある。

まさかこんな座椅子に何時間も座って待ってもいられない。

そこで、近くのネットカフェに入ることにした。

👉 ネットカフェ・漫画喫茶のメディアカフェポパイ

3時間パックでリクライニングシートの個室を選び、紙コップにジュースを注いで、薄暗いブースに入る。

目の前のパソコンには目もくれず、iPhoneにダウンロードしておいたAmazonプライムビデオの『ディストラクション・ベイビーズ』を開く。

あらすじ:2011年の愛媛県松山市。両親を早くに亡くし、港町で喧嘩に明け暮れる芦原泰良(柳楽優弥)は、ある日、同居していた弟の将太(村上虹郎)の元から姿を消す。繁華街に現れた泰良は、道行く人々に次々と喧嘩を仕掛ける。高校生の北原裕也(菅田将暉)は泰良に興味を持ち、彼と行動を共にするようになる。〈Wikipediaより引用〉

観ているだけで、痛くなるような喧嘩のシーンが続く。しかもその喧嘩には何の理由もない。

しかしこの現世において、何の理由もなく物事は決して起こらない。そういう風になっている。

ただ、他人には分かりにくい理由があるだけだ。

ところで、グーグル翻訳で「distraction babies」と入力してみると、「気晴らしの赤ちゃん」と翻訳されるが、これは物語の内容とは少し違うような気がするが、喧嘩を気晴らしだと考えれば、あながち間違いでもないのかもしれない。

他にはこんな意味もある。

Eゲイト英和辞典: distraction 音節dis・trac・tion発音記号dɪstrǽkʃ(ə)n 名詞 1気を散らすこと;注意散漫;気を散らすもの 2気晴らし,娯楽 3取り乱すこと,逆上;精神錯乱,乱心

PDQ®がん用語辞書 英語版: distraction 対訳 気晴らし(きばらし) 原文 in medicine, a pain relief method that takes the patient’s attention away from the pain.

日本語訳 医学において、患者の注意を疼痛からそらす疼痛緩和法の一種。

中でも、上記引用した「患者の注意を疼痛からそらす疼痛緩和法」というのが興味深い。

主人公の少年が喧嘩によって、別の疼痛から注意を逸らしているのだとしたら、それは一体どのような疼痛なのだろう。

自分を取り巻く環境だろうか。その身の不遇だろうか。

彼が矢吹ジョーだったなら、いつか丹下団平と出逢うであろうにと、おれは映画を観ながら何度も思ったが、残念ながら本作は「ディストラクション・ベイビーズ」であり、「あしたのジョー」ではなかった。

したがって、彼はその常軌を逸した行動を修正することもなく物語を疾走していく。

その先には不幸な結末しか思いつかない。

一切皆苦という言葉がサブリミナルにフラッシュする。

彼は、一切皆苦のこの世に抗うことができるのは暴力だけだというように拳を突き出す。

復活の儀式をするように相手の顔面を蹴り上げる。

透明な存在に着色できるのは赤い血だけだというように。

ペイント・イット・レッド。

ただ、この映画には、村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」のようなカタルシスはない。

柳楽優弥扮する主人公の彼には新しい歌がない。

ただ、ビートだけがあってそれに乗せる歌がない。

今の若者たちはそういう時代を生きている。

その数日後、そんな今の若者たちを主人公とした映画をもう1本観た。

セトウツミ

セトウツミ

ほぼ全篇が、学校の帰り道にある川岸で交わされる2人の高校生の会話で成り立っているなかなか味わい深い作品だ。

そして「ディストラクション・ベイビーズ」を観た後もあって、なおさらその「普通っぽさ」にほっとすると同時に、オフビートということを思う。

オフビート…もしかすると、これからの若者たちが生きていくために身につけておくべき素養のひとつなのかもしれない。

Amazonプライム・ビデオ

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