小さな声で話そ SION
via youtube.com
今日もまた大声を出すやつらが唾を飛ばし泡を吹いて叫んでいる。
小さな囁きにこれまで耳を貸すこともなかったやつらがこれまで以上に叫んでいる。
ちっぽけだが数万、数十万の格納容器から漏れ出している呟きをかき消すように叫んでいる。
そんな呟きなどまるで始めから存在しなかったかのように叫んでいる。
そんな呟きなど取るに足らないと耳を塞いでいる。
やつらが認めるのは自分の声を忠実に聞く者たちだけだ。
そして忠実な者たちは大声の主の意を受けて、こう言う。
"呟きなど問題ではありません。多少のノイズはありますが直ちに影響は出ないので心配はいりません。
ネットではあることないことが出回っているので近づかないでください。
基準値を超えた呟きに被爆する恐れがあります。"
忠実な者たちにとってコンプライアンスとは意見を持たないことだ。
目の前の現実から目をそらすということだ。
大声の主から貰ったあめ玉で耳を塞ぐということだ。
だがすでに呟きは個人という格納容器から流出して拡散し続けている。
流出した呟きはまた別の呟きと結合していく。
それらはやがて暫定基準値を超えて高濃度の意識に変わるだろう。
高濃度の意識に満たされた世界では誰も大声で叫んだりしないだろう。