ZEN SHUFFLE
禅展なう。 pic.twitter.com/RIbSWwzvTs
— go-nirvana (@igomild) 2016年11月20日
今日、11/24は雪が降った。50数年ぶりらしい。灰色の海に間断なく降り落ちる雪にしばし見惚れた。しばらく見つめていると、自分と眼前の風景との境界が曖昧になる。
4日前、上野まで足を伸ばして禅展を観に行ってきた。4日後に雪になるなど予想できないくらいの暖かい、軽く汗ばむような陽気だった。上野公園は色々なイベントが催されているのか、多くの人々で賑わっていた。
禅展は上野公園を通り抜けたところにある東京国立博物館で開催されている。略してトーハクというらしい。おれは落ち葉や野口英世の像を写真に収めながら、トーハクに向かった。
なぜ上野公園に野口英世の像があるのか分からない。何か理由があるのだろう。そもそも人はなぜ誰かの像を立てるのだろう。
樹々は人の立てる像より高く伸び、空は更に高い。
入場料を払って、トーハク敷地に入る。禅展が開催されている平成館に向かう途中に何やら厳しい建物。両側に狛犬ならぬライオンが睨みを利かせていた。
そして、平成館に入館。白隠慧鶴による達磨図が迎えてくれる。
今回の禅展は、臨済禅師1150年・白隠禅師250年遠諱記念ということで、主に臨済宗関連の品々が展示されている。
禅宗の成立、臨済禅の導入と展開、戦国武将と近世の高僧、禅の仏たち、禅文化の広がりという4章仕立ての構成となっていた。
順路に従って進む。
写真撮影禁止なので、ボールペンでメモを取っていたら、「館内ではこれをお使いください」と学芸員のお姉さんから鉛筆を渡された。
メモと言っても簡単な印象や感想を記したものだ。
- 雪舟による慧可断臂図…クレイジーの極み
- 大徳寺所蔵の臨済義玄像…敬愛する藤原新也氏に似ている。
- 直裰(じきとつ)と呼ばれる墨染の僧衣は79片の端切れをリメイクして作られている。リサイクル。
- 南禅寺所蔵の無関普門像はショーケン似だ。
こんな感じ。
寺に住まず、各地を遊行した幻住派という一派のことを今回初めて知った。中峰明本の生き方はまさに雲水そのものだなと思う。
足早に禅文化の表層を通り過ぎただけだが、やはり白隠以後の作品が個人的には好きだと思った。ポップアートを観ているような気分になる。白隠禅師は臨済禅の中興の祖とされているが、「中興」とは、要するにポップ化ということなのだろうと勝手に理解した。
白隠の描く達磨は、つまりウォーホールの描いたマリリン・モンローやキャンペルスープだ。
狩野山楽の龍虎図屏風、その他の虎の図、五百羅漢図、円相もすべてポップアートだ。
おれはそんなことを思いながら、会場を後にした。
エスカレーターを降りると、古代展みたいなものが開設されていたので、ふらりと寄ってみた。これが意外によかった。
古代展を観終わって、平成館を出るときには禅展で観たほとんどの作品の記憶は薄れていた。
横断歩道を渡り上野公園に戻ると、懐かしいキャロルのナンバーに合わせて踊るロックンローラーたちがいた。
彼らのダンスをしばらく眺めた後には、禅展はおろか古代展の記憶も薄れ、家に帰ってYouTubeでロックンローラーたちの動画を見ているうちに、なぜかシャッフルダンスなるものがここ数年、一部の若者たちの間で流行っていることを知り、このダンスが妙におれの脳みそに突き刺さり、それ以来シャッフルダンスの動画ばかりを繰り返し観ている今日この頃だ。
おれは今、今回の禅展のキャッチコピーを思い出している。
From Mind to Form
あらゆるマインドは何らかのフォームを求めずにはいられない。
禅も、埴輪も、ロックンロールも、シャッフルダンスもそれは、変わりない。