Subliminal Calling /『一瞬で心をつかむ文章術』レビュー
- 作者: 石田章洋
- 出版社/メーカー: 明日香出版社
- 発売日: 2016/06/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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レビュープラスさんより献本していただいた『一瞬で心をつかむ文章術』を読んだ。
読み終わって、もう一度本をパラパラとめくり考える。
読んでいる最中に心に過ぎったことを思い出す。
思い出すというより眺めると言った方が近いのかもしれない。
それは映画の最後に流れるエンドロールを眺めるのに似ている。
おれは心のスクリーンに流れては消えていくエンドロールをぼんやりと眺める。そして、気になった箇所があれば、リモコンのポーズボタンを押すように一時停止させて、しばし黙考する。
文章を素早く書くための、たった1つのコツ。それは「しっかり考えてから書き始める」ことです。/p.25
確かにその通りだ。世の中は、おれを含めて「しっかり考えてから」という当たり前のことがないがしろにされている。
だから、このタイトルに惹かれ手に取った人の何パーセントはがっかりするかもしれないとも思う。
「一瞬で心をつかむ」文章を、この本を読んだだけで一瞬で書けるようになるかもしれないと淡い期待を抱いている人々は失望するかもしれないと思う。
だからと言って、この本が間違っているというわけでは、もちろんない。
間違っているのは、何でも簡単に事が運ぶと思い込んでいる人々の方だ。
そういう人々に共通するのは、願望や羨望や欲望だけがあって、「問いがない」ということだ。
問いがなければ、答えはない。
本文中にも同じことが書かれている。
ですから最初に問いを決めなければ、心をつかむ文章は一行たりとも書けません。/p.34
これは、願望だけあって問いがない人々に対する呼びかけであり、確認だ。
「あなたは本当に、心をつかむ文章を書きたいのですね?そうですか。わかりました。それでは次に進みましょう」
先に引用した文章は、こうした囁きがハミングのように重なっている。
これを聞き逃すとしたら、あなたの心は「下心」で詰まっている可能性がある。言うまでもなく、願望、羨望、欲望は下心だ。
下心とは、心の下に位置する。心より一段も二段も格下のマインドの動きだ。
それを思考と呼ぶ。
それを思考と呼ぶことで、あたかも高級なものであるかのように見えることもあるが、結局のところ、それは下心だ。
「野心」もまた思考である。「心」という文字に一字でも付け足せば、それは思考となる。
いずれにせよ、あなたが本当に「心をつかむ」文章を書きたいと思うのなら、下心を捨てることから始めなければならない。
そのとき、本書に紹介されているいくつかのパターンは役に立つはずだ。
本書は、「問い」を持たず、答えだけを求めたり、徒らにテクニックだけを求めたりすることを止めて、本当に文章に向き合うことをしませんかとサブリミナルに囁いている。
文章は、問いかけに対する心の答えだ。そして、心は心に感応する。