『仏教思想のゼロポイント』を読んだ
横浜も梅雨入りしたようだ。肌寒い朝だ。雨の音と換気扇の音がする。
とりたててすることがないのは、いつものことだが、今朝は特に何もない。
とりあえずコーヒーを啜った後、再び布団に潜り込んだり、また起きたりしながら、断続的に読み進めていた『仏教思想のゼロポイント/「悟り」とは何か』をようやく読了した。
どんな本かと言うと、個人的には「とても面白い本で、しかも良い本だ」という極めて曖昧な感想しか思いつかないが、記憶を辿ってみると、自分にとって「良い本」というのは、いつもそんな感想をもたらしたものなので、この本はきっと「良い本」だ。
とは言え、それだけではあまりにも愛想がないので、本書の「はじめに」に記されている文章を引用することにする。
『本書においては解脱・涅槃とそれがもたらす結果についての考察が行われているが、その導きの糸として、具体的には二つの問いを立てる。即ち、
1 ゴータマ・ブッダの言う解脱・涅槃とは何か
2 ゴータマ・ブッダは「悟った」後、なぜ死ななかったのか』/ p.3~4
どうですか。面白そうでしょう。
さて、この本は実際に面白いのだが、どのあたりが面白いのかと自問すると、「まあ何というか…全部です」と極めて稚拙な言葉しか思いつかないのだが、記憶を辿ってみると、自分にとって面白かった本というのは、しばしの沈黙を与えてくれるものなので、この本はきっと面白い本だ。
いずれにせよ仏教、マインドフルネス、ウィッパサナー瞑想等に関心がある人は読んでおいて損はないはずだ。
もちろんこの本を読んで、悟りが得られることはないだろうが(もしかするとあるかもしれないが)、
『あくまで自らの問いを深め、己の人生の指針を定めるための、仏教という思想と実践の体系に関わって…』/p.213
いきたいと多少でも思うのなら、この本は重要な資料となるだろう。
と、おれが軽い感じで書いたからと言って、舐めてかかってはいけない。おれ自身が軽いだけで、その内容は著者がかけた時間と思索と実践とでずっしりと重い。
本書は本気で実践した者のみが立つことのできる地平から語られている。
そして、われわれを「如実の風光」を見に行こうと誘うのだ。
- 作者: 魚川祐司
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/04/24
- メディア: 単行本
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