Can you hear the sad song ? /『ただそのままでいるための超簡約指南』レビュー
- 作者: J・ジェニファー・マシューズ,古閑博丈
- 出版社/メーカー: ナチュラルスピリット
- 発売日: 2014/10/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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それで、何の問題もない。
自分が「今この瞬間」にどんな感情を持って、どんな思考をしているかに気づいているのなら、それでいい。
この「薄い本」の著者である J・ジェニファー・マシューズは女性で、ボストンのホームレス支援のための施設で働いているという。
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ホームレス支援施設で働く前は、救急センターでカウンセラー・瞑想指導者として働いたようだ。 その写真は、中性的な顔立ちとキャップを被っているのとが相まって、どこか「禅僧」を思わせる。
その表情は、あれかこれかと答えを求める者たちに「あなたはそう思うのね」と微笑んでいるようだ。
あれかこれか。白か黒か。善か悪か。勝ちか負けか。
本書は、そんなお馴染みの二元論を超えた思想、いわゆる「非二元論」、あるいは「アドヴァイタ」として知られる思想というか考え方というか、そんなまなざしで語られている。
しかしそんなことは知らなくてもいい。大切なのは、「今この瞬間の経験の神秘とせつなさ」に気づき、そこにとどまり続けること。
そのためにはどうしたらいい?
ただそのままでいること。
そしてそんな「ただそのまま」から離れようとする「自分」を見つめ続けること。
やがて、あるいは即座にあなたは目撃するだろう。「個として閉じられた自分」という蕾が開花するその瞬間を。
少し前の澄みわたったある秋の日、わたしはライティングデスクを夢中になって見つめていた。気がふれた人間だと思われたいわけじゃないけど、ライティングデスクがわたしに「やあ」と言った…中略…ライティングデスクは自己発光しながら輝いていた。 p.70
その瞬間、すべてが「自己発光」する。そしてあらゆる「境界」がワンネスに溶けていく。
おれもそこまでは分かる。しかし「その瞬間」にとどまり続けることはできていないことも知っている。
いや、違う。
「知っている」のではない。本当は知らないふりをしているだけだ。
おれたちは「今この瞬間の生の神秘」にとどまり続けることしかできないという「事実」から目を逸らしているだけだ。
この「薄い本」の行間には書かれなかった著者の「分厚い」経験と思索が充満している。ページをめくるたびに、どこか懐かしい芳香が鼻をくすぐる。アロマセラピーを受けているような感覚に包まれる。
心がシンと静まり返っていることに気がつく。
Taste your life !
レビュープラスさんより献本いただきました。