反語としての思考法/『複数の問題を一気に解決するインクルージョン思考』レビュー
- 作者: 石田章洋
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2016/05/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ローリング・ストーンズのアルバム「アンダーカバー」に収録されている「It must be hell」という曲はこんな歌詞から始まる。
おれたちは問題を抱えている。それは間違いない。
やはり、そうか。そうなのか。
どうやらおれたちは問題を抱えている。個人的にはあまり感じないが、ミック・ジャガーが言うのだから間違いないのだろう。
そういうわけで、おれたちは問題を抱えている。
しかもそれぞれが抱えた問題は誰かの問題と絡み合い更に複雑になっていく。中には、問題を解決するどころか、溜めに溜め込んでその中で生活することに慣れ切ってしまうケースもあるくらいだ。
日々、八方塞がり。雁字搦めのエブリデイ。トレードオフの人生ゲーム。とかくこの世は住みにくい。
住みにくいのは、部屋が狭いからだ。家が狭いからだ。おれたちの生活はいつの間にか「問題」が主役になっている。おれたちの心の中は、まるで引っ越し直後のように問題の詰まったいくつもの段ボール箱に占有されている。
ワイドショーのゴミ屋敷の住人を笑っている場合ではない。彼らはおれたちの鏡像だ。
もっとすっきりしたい。あれやこれやの問題を一気に片付けたい。片付けるべきだ。
本書はそんな状況を一掃する可能性を示唆するものである。
どうやって⁈
おれは本書に向かって問いかける。やがて、言葉が聞こえてくる。おれはそれに耳を傾ける。
「インクルージョン思考を使うことです」
インクルージョン思考?それは一体どのようなものなのか?
「インクルージョン思考とは、複数の問題を一気に解決するアイデア、つまりインクルーシブなアイデアをつくるための思考法のことです」/ p.004
なるほど。で、具体的には?
「ページを開いてください。そして読んでください」
そうきたか。まあそうだよね。
そういうわけで、おれはこの本を読み終わった。
そして、もう一度耳を澄ます。行間から聞こえてくる声を待つ。
あらゆる問題はすべて思考から生み出されるのです。
思考によって生み出された問題を解決する思考はありません。
それならこのインクルージョン思考の「思考」とは…
このインクルージョン思考において、思考の果たす役割とは、デフォルト・モード・ネットワークを稼働させるための準備運動のようなものなのです。もっとも、これはインクルージョン思考に限ったものではありません。
反語としての思考法…
そういう見方もできなくはないでしょう。本来、有効な「思考法」とは反思考的性質を持っているのです。
デフォルト・モード・ネットワークは瞑想状態に似ているようだ…
そうかもしれません。あなたが、「その状態」を何と呼ぼうと自由です。しかし、そんなことより大切なことがあります。
そもそもアイデアとは、問題を解決して誰かを笑顔にすることが原点です。/ p.198
なるほど。
本を閉じたおれは、こう思う。
この『インクルージョン思考』は、利己的な在り方こそが「問題」を作り出すのだと示唆すると共に、その解決法は、
本書は、レビュープラスさんより献本いただきました。